DATE 2008.10.18 NO .



「――俺が引きつける。その間にお前らは逃げろ!!」

 じいやさん達王の間に残っていた人達をかばうように立っていたエッジが、刀を構え直し、前を見据えたまま強く命じる。
 前を、圧倒的な力で私達を追い詰めたイフリートを、まっすぐ見据えて。

「御館様っ!?」

 …言ってたじゃない。
 バブイルの塔でもイフリートに襲われたんでしょ?
 その時も、歯が立たなかったんでしょ?

 ねぇ、これが「人の上に立つ」っていう事?

 ずっとそうして生きてきたエッジのいるところに、私はまだ届かないの?

「……ちゃんと逃げとけよ、リディア――」

 ふいに耳元で低い、小さな声が響いた。
 目の前にいる「ともだち」とエッジの言葉に戸惑ってばかりだった私は、一瞬、反応が遅れる。

「エッジ…っ!!」

 すれ違いざまに斬りつけたエッジを、イフリートがすぐさま追う。

 王の間を包んでいた熱気が、ひいていく。



『手を出すな! 奴は…俺がこの手で…ブッ倒す!!』



 あ、れ……?

 すぐに見えなくなったエッジの背中の代わりに脳裏をよぎる、瞳。
 初めて会った時のエッジは、仮に何も事情を知らなくてもわかってしまいそうなほどの憎悪の色を瞳ににじませ、ひとりで、ルビカンテに向かっていこうとしていた。

 今は、違う。でも、あの時と同じに見えてしまう。
 ひとりで行こうとするエッジが。
 隣に立てない、私が。



『…何でお前が泣くんだよ』



 ――駄目だ、止めなきゃ。
 ひとりは、だめ……!!



「…リディア!!」

 ルカの声に、私は我に返った。

「とりあえずここから出ないと!」

 そう、こんなところでぐずぐずしてられない。

「…行かなきゃ」

「え?」

 私は、もう子供じゃない。
 私だって、エッジを支えてあげられるはず。

 ひとりには、させない。

「早くエッジのところに行かなきゃ!!」

「ちょっとリディア、待……っ!!」



 あとどれだけ走ったら、あなたの隣に立てますか――







≪あとがき≫
 集結編は凶器です。次2100hitキリリクの続きだったはずなのにな!
 エジリディは、どっちも相手の深いところはまだわかってない段階が好きです。 うちは基本エッジが報われてませんがごめんなさい。甘いのをお求めの方はリンク からエジリディアンソロサイト→さんかしゃいちらん、と飛んでいかれるのをお勧 めします。
 そんな管理人は、ブロークンハートというよりかは魔法剣みたいなバンドを期待 してた王道好きです、たぶん。





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